かつて“ターボ王国”であった日本・・・今はなぜ「ターボ車」が少ないのか(1/2)

かつて“ターボ王国”であった日本・・・今はなぜ「ターボ車」が少ないのか
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数多くの小排気量ターボをラインナップする欧州車

日本車と欧州製の輸入車を比べて明らかに違うのは、「小排気量ターボ」の品ぞろえだろう。輸入車では1リッターから1.6リッタークラスのターボ車が普及しており、逆に自然吸気のノーマルエンジンを探す方が難しい。

アウディ A1スポーツバックVW ゴルフ ハイライン

小排気量ターボは、動力性能と燃費に優れている。

例えば直列3気筒の1リッターターボを搭載する「アウディ A1スポーツバック」は、最高出力が95ps、最大トルクが16.3kg-m、JC08モード燃費は22.9km/Lに達する。動力性能を自然吸気エンジンに換算すると1.6リッタークラスだ。JC08モード燃費は日本の基準ながら、日本車と比べても1.3~1.5リッタークラスに収まる。

また、直列4気筒の1.4リッターターボを搭載した「フォルクスワーゲン ゴルフハイライン」は140馬力・25.5kg-m・19.9km/Lだから、動力性能は自然吸気でいえば2.5リッター並。燃費は日本車の1.5~1.8リッターと同等だから、これも効率が高い。

これらの小排気量ターボは、巡航時には小さな排気量を生かして燃料消費量を節約し、加速時にはターボを活用して必要な性能を確保する。このほか直噴式、6~8速といった多段化されたATなどを装着して、効率をさらに向上させた。

トヨタ オーリススズキ バレーノ

一方、日本の小型&普通車では、欧州車のような小排気量のターボが普及していない。

数少ない国産小排気量ターボモデルは、海外市場に重点を置いたトヨタ オーリス(1.2リッター)とスズキ バレーノ(1リッター)、ミニバンのホンダ ステップワゴンとジェイド(1.5リッター)、ワゴンのスバル レヴォーグ(1.6リッター)などだ。ジュークの1.6リッターターボはボディサイズの割に排気量が大きくスポーツ指向になる。

小排気量と呼べるか否かは微妙ながら、トヨタは2リッターターボに積極的だ。

クラウンアスリートに加えて、レクサスのIS/NX/RX/RCをそろえる。日産もスカイラインにメルセデス・ベンツ製2リッターターボを搭載した。それでも欧州車の普及率にはおよばない。欧州車のターボチャージャーには、日本の三菱重工やIHI製が多く使われるのに、日本車には搭載車が少ないのが実情だ。

ホンダ ステップワゴンホンダ ジェイドスバル レヴォーグトヨタ クラウン日産 スカイライン

かつて「ターボ王国」であった日本

日産 スカイライン 2000RSターボホンダ シティターボ

残念に思うのは、かつての日本では1リッター~2リッターターボが豊富だったことだ。

この時代の3ナンバー車は自動車税が2倍以上に跳ね上がり、卸値に課税される物品税率も高かったから車両価格も割高だった。そこで国内で数多く売るには5ナンバーサイズで開発することが求められ、パワーアップの手段として2リッター以下のターボ車が普及した。

日本車で最初にターボを搭載したのは、430型の日産 セドリック&グロリアで、1979年に2リッターターボを追加している。

1980年には6代目日産 ブルーバードが1.8リッターターボ、1981年には6代目日産 スカイラインが2リッターターボ、1982年には初代ホンダ シティが1.2リッターターボ、1983年には人気の高かった5代目マツダ ファミリアが1.5リッターターボ、5代目サニーも1.5リッターターボ、2代目シャレードは直列3気筒の1リッターターボという具合に、次々とターボ車が設定された。

1980年代の中盤頃になると、売れ筋になる日本車の大半に用意されている。ターボは今日の環境技術としてではなくパワーアップの為の手段だったが、当時の日本はまさに「ターボ王国」であった。

3ナンバーの自動車税改正をきっかけとして「ターボ車」の存在意義が薄れていく

トヨタ プリウス(初代)

ところが1989年に消費税の導入と引き替えに自動車税制が改訂され、物品税も廃止されたから3ナンバー車の不利が実質的に解消された。「パワーが必要なら排気量を大きくすれば良い」という話になり、ターボ車も廃れていった。

この後、二酸化炭素の排出による地球温暖化の問題が顕在化して、欧州車は小排気量ターボに力を入れたが、日本では1997年に初代トヨタプリウスが登場。

これ以降はハイブリッドがエコカーの象徴になり、ターボが環境技術として注目されることはなかった。

ただし日本の全メーカーがハイブリッドを用意したわけではない。搭載車を充実させたのはトヨタとホンダで、他メーカーのエンジン技術は進化が滞った。

日産は1990年代に経営が悪化して、1999年にルノーと提携を結んだ。

カルロス・ゴーン氏を筆頭に経営の建て直しに乗り出し、2000年代の中盤にはティーダなどの新型車を次々と投入。この時にHR型など燃費の優れたエンジンも開発したが、ハイブリッドや小排気量ターボに目立った動きはない。その代わり、日産は2010年に電気自動車のリーフを発売した。

マツダも多系列の販売戦略が失敗するなど経営に苦しんだ。

1990年代の中盤以降はフォード出身の社長が経営再建に乗り出し、2002年に運転の楽しさを重視したクルマ造りを行う「Zoom-Zoomコンセプト」を立ち上げ、初代アテンザを発売している。

以上のようにトヨタとホンダは環境技術としてハイブリッドに力を入れ、日産やマツダは経営再建が重要課題になっていた。

この10~15年間で欧州メーカーはターボ技術を進化させ、2010年頃から小排気量ターボを積極的に発売している。日本メーカーは思わぬところで出し抜かれた。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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